System of a Down (システム・オブ・ア・ダウン) 3枚目のアルバム「Steal This Album!」。
前作「Toxicity」から1年3カ月。日本語にすると「このアルバムを盗む」と、インパクトのあるタイトルと、CD-Rのようなシンプルなジャケット。
タイトルも見た目も皮肉がたっぷりで、バンドの意図とは異なる形でリリースになった1枚ですが、システム・オブ・ア・ダウンを聞くなら外せない内容。
というよりも、寧ろ個人的にはバンドの5枚の中で1番押したいアルバムです。
Steal This Album! 収録曲概要
「Steal This Album!」収録曲は以下の通り。
- Chic ‘N’ Stu
- Innervision
- Bubbles
- Boom!
- Nüguns
- A.D.D. (American Dream Denial)
- Mr. Jack
- I-E-A-I-A-I-O
- 36
- Pictures
- Highway Song
- Fuck the System
- Ego Brain
- Thetawaves
- Roulette
- Streamline
バンドは「Toxicity」リリースの際に、30曲以上をレコーディング。結果的には15曲が収録されてリリースされました。そこで残ったのが、アウトトラック。
それらの曲が2002年の初頭に「ToxicityII」としてネット上に流出。当然ながら完全に違法の上、音質を含めて意図しない形にバンドは大きく失望。
そこで取った行動が、だったら高品質でしっかりとした物をと、リリースされたのがこのアルバム。「このアルバムを盗む」となったのは、意味がありました。
アウトトラックというと単なるBサイドやおまけかとも思われますが、聞けば分かるそのクオリティ。「Toxicity」に入るべき場所がなかっただけでした。
今だと流出はYouTubeに動画としてアップされることが多いですが、リリース当時はMP3として違法にアップされることが多かったんです。
正規に出た物でも当然アウトですが、世に出していない曲が違法に出回る…。システム・オブ・ア・ダウンでなくても許容はできない形ですよね。
本来の予定になくても、結果として3枚目となったアルバム。内容は熱いです。
Chic ‘N’ Stu
狂気的なオーブーニング「Chic ‘N’ Stu」。(1曲目)
激しいだけでなく、途中に静かでポップなメロディーになるからこそ、より狂っている感じが強くなる曲。個人的にバンドの中で、一押しの曲!
完全にいっちゃっているんですが、そこがまたカッコいいんです。
Advertising’s got you on the run
「広告は逃げていく」。1節だけ見るとなんのことやらですが、何にしても広告がついて回る世の中。そう思ってなくても、振り回されているのが日常です。
特に何か悩んだ人には、気になるからこそ解決方法を探す。そこに群がる悪いやつらが言葉巧みに操ろうとする。解決するつもりが、闇に落ちていく…。
ピザの表現もしていますが、見たら食べたくなる。結果的に操られているんです。曲としては狂気的ですが、思いの他に深いものがありますよ。
Bubbles
泡が弾けるように、必要なことさえも忘れていく「Bubbles」。(3曲目)
権力を振るわれることで、他人の意思が自分の中になっていく。そこに気付いているけれど、止める余地がないことに寂しさを感じさせます。
May I remind you, may I remind you, may I remind you
「思い出せれてくれ。思い出したいんだ。思い出したい」。本当の自分をの思いだからかこそ、聞いていて切なくなる思い。それでも、消えていく…。
寂しく、嘆きの歌。権力にどうこうせはなく、激しい音は自分を恥じているかのよう。また演奏がカッコよく、聞けばコピーしたくなること請け合いです。
Boom!
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爆弾への抗議「Boom!」。(4曲目)
1つのボタンで爆弾が投下され、亡くなる人。奪ってはいけない命が奪わていくんです。Bombとかけているのでしょうけど、ブームにはなっていけないこと。
爆弾ですが、戦争をすることへの何してんだ! の抗議でもあります。
Why must we
Kill our own kind?
「なぜ俺たちは、同じ人を殺すのか?」。その通りの思い。爆弾を投下する人にはその行動の意味があるとしても、人の命よりも重いものかい? の問いかけ。
MVも制作されていますが、なぜ? が怒りになっている曲。印象的です。
I-E-A-I-A-I-O
それがあなた達の理想なのか? 「I-E-A-I-A-I-O」。(8曲目)
気になるタイトルの「I-E-A-I-A-I-O」は「Idealization = 理想化」。母音となる部分を取って略した言葉。歌詞も含めて見ないと分からない、面白い趣向です。
I-E-A-I-A-I-O, why?
And we light up the sky
「理想化 。なぜ? そして俺たちは空を照らす」。明るい日差しというよりも、攻撃による光ではないでしょうか。誰かの理想が攻撃となり、悲しむ人がいる。
まるで呪文のように歌うサビが、聞いていて耳に残ります。
36
操られるのか、自分のペースで生きるのか「36」。(9曲目)
コンパクトな曲が多いバンドの中でも46秒と、最短。あなたは人生をどうすごすんだい? と、曲が短いからこそメッセージが強いです。
Will you live at your own pace?
「あんたは自分のペースで生きるの? 」。この曲の中でいえばテレビ。今でいえばネットによって、意思を操られている人には、強いメッセージ。
また、気になる36は、リリース当時のサージ・タンキアンの年齢。実際のところは分かりませんが、人生を問うというのが年齢という数字になったのかも…。
Fuck the System
巻き舌で歌うのが狂気を増す「Fuck the System」。(12曲目)
人によって受け取り方が変わるであろう曲。この世界は間違っているとも取れますし、狂っているのであれば、いっそのこと壊してしまえ! という感じ。
We all need to fuck the system!
「俺たちでシステムぶっ壊してしまえ! 」。怒りというよりも、全てを一旦”0″に戻してやる! という思いなのかもしれません。
不平不満をいうのではなく、ぶち壊すという行動へ。聞いても、かなり狂気的な曲。これはシステム・オブ・ア・ダウンでないと表現できないでしょう。
Roulette
頭の中で気持ちがぐるぐると回る「Roulette」。(15曲目)
バンドには珍しく、アコースティックな曲。他とは異なる表現だからこそ、アルバムの中でも際立っているとともに、言葉にした思いがすっと入ってきます。
I know, how I feel when I’m around you
「知ってる。俺のそばにいる時のあなたの気持ち」。人は機械ではなく、それぞれが感情を持った生き物。俺の行動が何を思うかということでしょうか。
実際には人によって受け取り方も行動も異なるからこそ、分かっているつもりがそうではなく、ぐるぐると気持ちが回ってしまうのかも…。
音もメッセージもシステム・オブ・ア・ダウンのイメージが広がる曲です。
あとがき
アルバム全体のテーマとしては、「Toxicity」のが上かもしれません。ですが、攻撃性が高いからこそ、聞く時を選ぶ内容でもありました。
そこに比べると激しさだけではない「Steal This Album!」は、聞きやすさがあります。その点も自分がシステム・オブ・ア・ダウンの中で好きな理由かです。
ロックやメタルだけでなく、ポップスなど関係ない雑食なのもあるかも…。
それにしても、このアルバムがリリースされた理由は違法アップロードからくるもの。アーティストを苦しめるものでしかないので、なくなってほしいですね。
きっかけは悲しいものであっても、本当にいい内容のアルバム。システム・オブ・ア・ダウンを聞く始まりとしてもオススメします。
以上、『System of a Down:Steal This Album! ~盗まれたのは本物じゃない~』でした。
『System of a Down』をApple Musicで
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System of a Down:System of a Down ~狂気の音が生まれた~
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System of a Down:Toxicity ~この毒から逃れることは不可能~
2002/11/26 release 3rd Album
System of a Down:Steal This Album! ~盗まれたのは本物じゃない~ ←今ココ
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2020/11/6 release Digital Single
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JOE (ジョウ)
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