Slipknot (スリップノット) 5枚目のアルバム「.5: The Gray Chapter」。
前作「All Hope Is Gone」から約6年ぶりの2014年にリリース。Slipknotの中で、現時点で一番リリース間隔が長いアルバム。
また、メインソングライターであったポール・グレイの死去、ジョーイ・ジョーディソンの脱退により、サウンドが大きく変わった1枚です。
アルバム・タイトルに「Chapter」とあるように、1曲1曲が章仕立てになっているのも特徴に。短編映画が集まっている感じがしますよ。
.5: The Gray Chapter 収録曲概要
「.5: The Gray Chapter (Special Edition)」収録曲は以下の通り。
- XIX
- Sarcastrophe
- AOV
- The Devil In I
- Killpop
- Skeptic
- Lech
- Goodbye
- Nomadic
- The One That Kills the Least
- Custer
- Be Prepared For Hell
- The Negative One
- If Rain Is What You Want
- Override
- The Burden
15、16曲目はSpecial Editionのボーナストラック。映画のエンドロールが流れたあとに、実はまだ続きがあったという感じが近い感じがします。
本編でしっかりと完結しているのですが、意味のあるボーナス・トラックですので、同様に楽しめるのも特徴。最後まで聞くのをオススメします。
ジェイムズ・ルートがメインソングライターとなった今作は、サウンドの違いはもちろん、ワンワードの曲名が多くなっているのも面白い部分。
また、ドラムがジョーイ・ジョーディソンとは大きく異なるのが、聞いてすぐにわかります。2人のメンバーの違いが、聞いてすぐに分かるアルバムです。
Sarcastrophe
皮肉めいたことを口にしてとんでもない目にあうことという、少し変わった意味が曲名になっている「Sarcastrophe」。(2曲目)
リフが印象的で、ギタリストが作ったとすぐに分かる曲。激しいメタルだからこそ、好きな人も多いのではないでしょうか?
皮肉めいたことというのは、本来信じるべき対象である神を冒涜していること。神が長く存在して、自分のために死ぬんだというのは変わった表現ですね。
自分は神をこえる存在だと言っているのかもしれません。実際には存在する自分と、信仰心の中で生きる神がどちらが先に死ぬかというと、自分ですよね。
リフがメインなのは、Slipknotにありそうでなかった曲のように聞こえました。
Killpop
SlipknotではPopという言葉が印象的に感じる「Killpop」。(5曲目)
痛みが自分には必要だ。死とイカレタ私を愛してというのはよく分からない世界観ですが、ポップなメロディーであるのに冷たさにつながっている気がします。
激しい曲である「The Devil In I」、「Skeptic」に挟まれているので、アルバムの中でも聞いていてとても印象に残りました。
メンバーであるショーン・クラハンが監督をしたMVも、とても印象的。KillとPopという本来混じり合う言葉ではないからこそ、白と黒なのかもですね。
Goodbye
Slipknotとして考えると意外な曲名の「Goodbye」。(8曲目)
聞く人によっていろいろな解釈ができる曲だと思いますが、このアルバムの制作の前に亡くなったポール・グレイに宛てられている曲だと感じました。
分裂しそうになっていても団結したSlipknotの状況や、誰も救ってはくれないけれど、最後にできることはさようならとなっていたからです。
Stone Sourの方が似合いそうなのに、Slipknotとしてやることに意味を感じる曲。ポール・グレイが重要な存在だったと感じさせてくれます。
Nomadic
従来のSlipknot通りの曲「Nomadic」。(9曲目)
「Nomadic = 遊牧民」と曲名だけを見ると不思議な感じがしますが、場所が変わることに全てを忘れていくというのは、遊牧民のような感じがします。
変わった場所も今は家のように感じるというは、このアルバムでメンバー変化をしていること言っているような気がしました。バンドが家という感じ。
バンドとして進み続けるしかないのは明白であること、「Goodbye」のすぐ後に続けてこの曲が来ていることに、大きな意味があるような気がしますよ。
9人メンバーがいるからこそのこの曲のサウンドは、聞いていて安心します。短いですけれど、ギター・ソロが印象的ですので、聞き逃がせません。
Override
Special Editionのボーナス・トラック「Override」。(15曲目)
.5: The Gray Chapterには続きが合ったというような曲。ボーナス・トラックにしておくのはもったいないぐらいですし、単なる追加曲ではないですね。
ノーマル盤の「If Rain Is What You Want」で終わるのもありだからこそ、ボーナストラックなのかもしれません。アルバムの難しいところですよね。
俺たちは「Override = 上書き」されていくからこそ、最後に「Give up」と何回も復唱するのが、とても印象的ですよ。聞いていると切なくなります。
この曲も人によって解釈が変わってくる歌詞だと思いますが、上書きされてしまうからこそ、自分に意味があるのか? と問いただしているのかもしれません。
あとがき
ギターのジェイムズ・ルートが中心となった楽曲は、Slipknotが変わったなと感じられるアルバム。ドラムの変化もかなり大きいですね。
打楽器でパーカッションがいるSlipknotでは大きな変化がなさそうにも思えますが、ジョーイ・ジョーディソンがいないのは変化が大きかったです。
無機質な感じが強くなったので、痛みや恐怖という感じが強くなったように感じます。Slipknotの進むディープな世界には、必要な音だったのかもですね。
3枚目「Vol. 3 The Subliminal Verses」ほどではないですが、アルバムの世界観を理解するには、曲が章になっていることで時間がかかりそうな気がします。
Slipknotで数字が入るアルバムは、少し内容が複雑なのかもしれませんね。少し複雑な分、世界に一歩足を踏み込むと長く楽しめるアルバムになりますよ。
以上、『Slipknot:.5: The Gray Chapter ~新しい章がここで幕を上げる~』でした。
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