Pantera (パンテラ) 6枚目のアルバム「Vulgar Display of Power」。
前作「Cowboys from Hell」から1年7カ月。邦盤では「俗悪」とピンポイントに短縮したタイトルとなってリリースされた、極悪サウンドが聞ける1枚。
前作の衝撃が一瞬のことではなく、決定的に位置つけた熱いアルバムです。
Vulgar Display of Power 収録曲概要
「Vulgar Display of Power」収録曲は以下の通り。
- Mouth for War
- A New Level
- Walk
- Fucking Hostile
- This Love
- Rise
- No Good (Attack the Radical)
- Live in a Hole
- Regular People (Conceit)
- By Demons Be Driven
- Hollow
- Piss
11曲までが本編で、12曲目「Piss」は20周年デラックス・エディションで追加されたボーナス・トラック。全てにおいて、グサグサと突き刺さるサウンド。
また、多くの人がパンテラと言ったら…という曲が多く含まれるのも特徴。重く疲労感が強くあるのにに、最後まで熱くならずはいられない内容です。
メタル好きが1度も聞かずに通らないというのは、選択肢としてありえないと言っても過言ではない、アルバムではないでしょうか。
Mouth for War
![]() | 「Mouth for War」 フルMVをApple Musicで観る |
戦争への叫び「Mouth for War」。(1曲目)
すれば何が起こるのか分かっているのに、繰り返される戦争。どこに向けて発散すればいいのか分からないからこその、激しく強い怒りが爆発しています。
Revenge, I’m screaming revenge again
「復讐、再び復讐を叫ぶ」。冒頭の歌詞ですが、全てを語っている部分。人それぞれの選択する理由はあっても、戦争を行うことで生まれるのは怒り。
だからこそ復讐心が生まれ、延々と繰り返される。怒りは平常心をなくし、人をおかしくする。感情があるからこその思いが、寂しさを感じさせます。
戦争を推奨するのではなく、避けきれないことへ現実だからこその怒りが痛い…。思いのこもった音の表現が、グサグサと突き刺さってきます。
A New Level
新しく強くなるのは…「A New Level」。(2曲目)
リフが極悪な曲。ハーフとノーマルテンポでの表現は、メタルで今もよく聞く手法。どれだけパンテラが影響を与えたのか、実感する部分でもあります。
A new level
Of confidence And power
「新しいレベル。自信と力を持って」。文字だけも見たらポジティブなようにも見えますが、ク◯みたいなことをされた怒りによるもの。
息の根を止めてやる! の感情は、バーサク(発狂)状態だからといえそうです。
Walk
![]() | 「Walk」 フルMVをApple Musicで観る |
名実ともに代表曲「Walk」。(3曲目)
パンテラと言ったら、まずこの曲が思い浮かぶ人が多いはず。聞けば体が反応してしまうリフ。意図せずギターを持つと、弾いてしまうメタラーは多いはず。
シンプルで難しくないのに、熱くなるリフ。カッコいい! という言葉しかありません。
Respect, walk
What did you say?
「尊敬、歩く。何て言ったの?」。誰かを信じてきたからこそバカを見たのだから、我が道をあるき続けると言っているかのよう。
誰かのためではなく、自分自身のために。自我の強さを感じさせます。ソロ以外を弾くのは全く難しくないので、特にメタラーであればコピーは必須です。
Fucking Hostile
内にある敵対心「Fucking Hostile」。(4曲目)
表面には出さずとも、漏れることなく溜まっている憎しみと怒り。心の中の悪魔を描いているようで、闇の深さを感じずにはいられない曲。
誰もが持つ、善ではない悪の部分。見えないからこそ興味深さが増していきます。
Fucking!Fucking!Fucking!
Fucking hostile!
「クソっ! x3 クソ敵意 」。最後に絞りだすように吐き出す言葉。溜まりすぎているからこそ特定の人ではなく、全てに対するように聞こえるのも興味深い。
いい人ぶっていても、常には不可能だという人だからこそを感じさせます。
This Love
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狂ってしまったからこその「This Love」。(5曲目)
甘いラブ・ソングではなく、イカれた感情。その思いが強過ぎるからこそ、歯車が壊れていくのは、痛さでありながら寂しさを強く感じさせるもの。
I’d take my life and leave love with you
I’d kill myself for you, I’d kill you for myself
「自らの人生を奪い、愛を残す。あなたのために俺は死ぬよ」。心に一生消えることのない痛みを残すことが、愛情表現。あまりにも怖すぎる感情。
イカれてしまっているからこそ、何がおかしいのか分からないのは、愛情も時としていいものではないとさえ感じさせます。決して甘くない、怖い愛の歌。
思いが強くなり過ぎて度を越えてしまうのは、愛だからとも言えそうですが…。
Hollow
中身がなくなってしまった「Hollow」。(11曲目)
本編最後は、なんともいえない寂しさ。激しさだけでなく、こういう曲も当たり前のように表現ができるのが、パンテラの魅力の1つ。
It’s as if he were dead
「まるで彼は死んでいるかのよう」。何を話しても通じない、空のようになった状態は、生きる屍といえるような存在。
怒りが突き抜けた先になるのは、喜びではなく無の世界。人として感情がなくなってしまう怖さを感じさせます。最後にあるからこそ、寂しさが強いです。
Piss
![]() | 「Piss」 フルMVをApple Musicで観る |
20周年記念で追加されたボーナス・トラック「Piss」。(12曲目)
「Piss = 小便」。すごいタイトルは、皮肉そのものを表現した曲。
Talks big ‘cause he’s so small so
「やつはすげー小さいから、大きく話す」。正にク◯みたいな野郎。でありなが、◯ソにすらなっていないから、小便。皮肉そのものではないでしょうか。
すごく面白い曲でありなが、たしかに本編に入る場所はないかもなので、ボーナス・トラックとして収録されたことにも納得。隠し玉に近いかも…。
あとがき
いつ聞いても強力なメタルアルバム。全体としてハンパないのですが、特に前半は打ちのめされてしまう、激しさが待ち受けています。
聞いた感覚でいえば、正にジャケットの殴られているような形。どのアルバムも印象的なものが多いパンテラですが、今更ながらすごくいいなと感じさせます。
また、疲労感があるのに、最後まで通して聞いてしまうアルバム。衝撃的なサウンドであるだけでなく、通り過ぎずに残るものがきっとあるからでしょう。
これかも変わらず大きな影響を強く残していくのは、間違いなさそうです。
以上、『Pantera:Vulgar Display of Power ~表現するのは内にあるもの~』でした。
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JOE (ジョウ)
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