Olivia Rodrigo (オリヴィア・ロドリゴ) 1枚目のアルバム「SOUR」。
2021年の年明け早々「drivers license」で鮮烈なデビューをした彼女のデビュー・アルバム。その勢いを切らず、しっかり1枚として提示をしてきました。
始まりのアルバムでこれだけのものができるというのは、今後にも期待が持てます。また、音楽として表現する幅が思いの外に広いのも、注目ポイントです。
SOUR 収録曲概要
「SOUR」収録曲は以下の通り。
- brutal
- traitor
- drivers license
- 1 step forward, 3 steps back
- deja vu
- good 4 u
- enough for you
- happier
- jealousy, jealousy
- favorite crime
- hope ur ok
「drivers license」はもちろん、先行シングル「deja vu」「good 4 u」を含めた11曲。35分のコンパクトさの中に、詰め込んだ影響と彼女ならではの表現。
また、タイトルが全て小文字表記。なんとなくその表現方法が、初期のBillie Eilishを思い浮かべてしまったのは自分だけでしょうか?
曲名で必要以上に説明をしていないのも、なんとなく似ているかも。とはいえ、歌や曲としての表現は特に歌詞が異なる形であるのも、付け加えておきます。
35分というコンパクトさもありますが、一気に聞き終わるアルバム。それでいて右から左に流れるではなく、しっかりと濃さがあるのも特徴です。
brutal
![]() | 「brutal」 フルMVをApple Musicで観る |
神はいつも「brutal」。(1曲目)
メッセージだけでなく、表現する音もパンク色の強い曲。オープニングに持ってきているからこそ、インパクトがより強くなっています。
舌を出したジャケットのイメージと、一番近いものがあるのかも…。
And I’m so sick of seventeen
Where’s my fucking teenage dream?
「もう17歳にはうんざりしているし、私の10代の夢はどこにあるの?」。多感な時期だからこそ、小さなことが気になってしまうというのはよくあること。
God, it’s brutal out here
「神よ、ここは残酷だわ」。10代だからいいねなんて言われるのは、当事者からしたら、その時は「どこが?」と思ってしまうことも多いはず。
状況としてはかなり恵まれた彼女が思うのだから、それでなければ余計に神に対して思うことは多いのかもしれませんね。
時を経ることで感情が変化しますから、彼女が20代、30代と年齢を重ねた後に、この続きの曲を書いたら面白かもなんて思ってしまいました。
traitor
![]() | 「traitor」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
私にとってあなたは「traitor」。(2曲目)
静かなる恨みであり、悲しみ。単純に音のみで聞くとの、歌詞を見ながらではギャップが大きくあるかも…。諦めもあるからこそ、すごく切ない思いです。
Brown guilty eyes and
Little white lies, yeah
「茶色いやましい目と、小さな優しい嘘」。思いと行動が伴わなれければ、相手は気付くもの。最初から恋する対象にはなっていないことも分かります。
You betrayed me
And I know that you’ll never feel sorry
「あたなは私を裏切った。そして、申し訳ないと思わないのも知ってる」。見ている方向が違うからこそ、感覚は異なっているかもしれません。
気を持たせることをしていたのかもですけれど、裏切ったとすら思ってもいないかもですから…。いわば一方的な感情から、自分は裏切られたと思っている。
男女間にある必要以上に優しくしたからこその、誤解から生まれた感情のように聞こえました。でも、そう思わせたというのは、よろしくないことなのかも。
1 step forward, 3 steps back
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アルバム収録曲でも特に話題となった「1 step forward, 3 steps back」。(4曲目)
オリヴィアがテイラー・スウィフトを好きなのは公言していますが、この曲は6枚目のアルバム「Reputation」から「New Year’s Day」を補間したもの。
歌詞は異なりますから、そのイメージとしては替え歌。ですからクレジットはテイラー・スウィフトになっていますし、実に面白い手法です。
Yeah, it’s one step forward and three steps back
Do you love me, want me, hate me?
「一歩進んで三歩下がるの。あなたは私を愛してる、飲んでる、憎んでる?」。進んでないからこそ、三百六十五歩のマーチとは異なる表現。
歩幅までは分からないからこそ、進む一歩がめちゃくちゃ実は大きくて、結果的に前に大きく進んでいるなんてこともあるかも…。
分からないとはいえ、暗さがないからこそ、希望も感じてしまいました。
また、テイラー・スウィフトのラッキーナンバーは13。楽曲も利用して、数字も思わせで使っているからこそ、後退する悪いイメージではないはず!
歌詞と表現する音を変え、自分の曲に。権利上の問題も申請をきちんとすれば通るのでしょうけれど、単なるカバーとも異なりますし、面白い表現です。
enough for you
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私なりには「enough for you」。(7曲目)
あなたのために頑張ったけれど、足りなかった。私の元からあなたは離れていくという、寂しい思いの曲。私なりにはが、相手には通じなかったのが切ない…。
You found someone more exciting
The next second, you were gone
「あなたはもっとエキサイティングが人を見つけたみたい。次の瞬間、あなたはいなくなった」。もっといい人がいれば、確かにあることかも…。
大人になるとその行動には歯止めがかかったりしますが、若かったら思っている以上にドライな行動をしたりしますよね。次の日には、別の誰かとか…。
私なりに頑張ったからこそ、今はこれ以上のことはできない。それで離れていってしまうなら、為す術もないという状態なのでしょう。
実体験なのか、周りであったことなのかは分かりませんが、切ない恋です。
happier
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皮肉の思い「happier」。(8曲目)
表現している世界感は「good 4 u」に近い形。それは私から離れていった、あなたへの思いだから。感情が残っているからこそ、思ってしまうことかもです。
I hope you’re happy
Just not like how you were with me
「あなと幸せを願うわ。私と一緒にいた時とは異なるように」。別れたのに優しい子だなと思いつつ、これはあくまでもいい子ちゃんである建前。
I hope you’re happy, but don’t be happier
「幸せになってほしいけれど、幸せにはならないで」。矛盾するからこそ言葉の表現としはおかしいですけれど、これが本音ではないでしょうか。
私といた時よりも笑顔で幸せにいられたら、なんかくやしいですから。特に別れたら二度と合わない人ならともかく、何かしらで見かけるとしたら余計に…。
少なくとも私より先に幸せにはなってほしくはないと思うのは、思いが残っているからこその、悔しさが関係していそうです。
jealousy, jealousy
![]() | 「jealousy, jealousy」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
比べてしまうからこその「jealousy, jealousy」。(9曲目)
自分にないもの持っている人を見て、憧れを超えて嫉妬してしまう。遠くにいる人であれば問題なくても、近くにいたら問題は出てきちゃうかもです。
With paper-white teeth and perfect bodies
Wish I didn’t care
「紙のように白い歯と完璧な体。私が気にしなければいいのに」。自分のよりも明らかにキレイで、どんなに頑張っても追いつくことできないことも自覚。
個人の差がだからこそ、気にしなければいいのに、頭から離れられない…。
Com-comparison is killin’ me slowly
「比較が私をゆっくりと殺すの」。別のことでも比較できたら勝る部分も出てくるはずなのに、明らかに自分が劣っている部分だけが頭から離れない。
“ゆっくりと殺す”というのは、ちゃんと分かるし、すごく面白い表現です。
今よりも向上するために誰かと比較するというのは重要かもですが、その対象を間違えると、よろしくない負の感情を生んでしまうのかもしれません。
自分でも分かっているのに、追い詰められる。比較って難しいですね。
favorite crime
![]() | 「favorite crime」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
少し変わった特別な感情「favorite crime」。(10曲目)
この曲で表現する思いに共感する人もいれば、分かり得ないという方も多いかもしれません。個人的には意味合いとしては分かるけれど、完全に後者。
もしかしたら、女性と男性で受け取り方が真逆の反応の仕方をするかも…。
You used me as an alibi
I crossed my heart as you crossed the line
「あなたは私をアリバイで利用したわ。あなたと同じように私も一線を超えたの」。2人がすることは「favorite crime = 好きな犯罪」。
決して良いことではないのに、シンパシーを感じてしまう。感覚的に理解が難しい人もいると思いますが、最後の歌詞にその答えが記述されています。
Your favorite crime
‘Cause, baby, you were mine
「あなたの好きな犯罪。だって、ベイビー。あなたは私のものだったから」。乗り越えるべきこととして行うのは例え間違っていても、同じことを共有する。
悪いことだからこそ、より結びつくだけでなく、ギュッとしてしまうのかも…。意味合いとしては分かるけれど、特に男性には難しい感覚かもです。
hope ur ok
![]() | 「hope ur ok」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
今の私からの手紙「hope ur ok」。(11曲目)
音としても、歌詞としても他の収録曲とは特に異なる表現。歌い方も含めて、優しく語りかけるようにというのが、大きな特徴です。
Nothing’s forever, nothing is as good as it seems
「永遠に続くものもなければ、見たままのものもないよ」。今までに経験をしてきたであろうことの後に、続くのがこの言葉。大きな意味を持っていそうです。
楽しいことだけでなく、つまんなかったり、つらいことも終わりはくるから。だからこそ、楽しむ時は全力で! そうで無い時は、少し我慢をしようねと。
‘Cause I love you
And I hope that you’re okay
「大好きだから。あなたが無事であることを願ってるね」。聞き手の受け取り方次第ですが、未来の私から、幼き自分への手紙のように自分は感じました。
これから起こることを何気ないことを含めて歌として伝えているからこそ、そう思った方がしっくりときちゃいます。実際のところはどうなんでしょうね?
他の曲もですが、歌詞がすごく面白い! それも誰かの言葉でなく、全てをオリヴィア・ロドリゴ本人が書いているというのも、すごくいいなと思いました。
あとがき
アルバムのリリースとともに、先行シングルを除いた収録曲全てのリリックビデオを公開。これはプロモーションでもあり、違法対策でもあるのでしょう。
現在進行系でYouTubeは違法動画の宝庫でもあるので、改善してほしいですね。音楽はただじゃないし、サブスクの月間料金なんて、微々たるものなので…。
それにしても「drivers license」が大ヒットしたからこそ、全て同じ路線で手堅く行くこともできたはず。そうはせずに幅を広げたからこそ、内容が面白い!
「good 4 u」の時点で広がりを見せていましたが、アルバムはもっとでした。歌詞は暗いというかネガティブ要素が強いのに、暗くなり過ぎていないんです。
また、音としての表現だけでなく、ビジュアルもキュートな彼女。この最初の時点がピークではなく、これからの活動こそもっと楽しませてくれそうです。
日本でも彼女と同じように突如ドカンとくるシンガーが出てきたら面白いのに! なんて、このアルバムを聞いていると感じてしまいます。
彼女の歌声は言葉としても聞き取りやすいので、洋楽初心者にもオススメです。
以上、『Olivia Rodrigo:SOUR ~思っている以上に甘くなくてゴメンね~』でした。
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JOE (ジョウ)
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