Måneskin (マネスキン) 2枚目のアルバム「Teatro d’Ira – Vol. I」。
前作「Il ballo della vita」から2年5カ月。本アルバムのリリース後に収録曲「ZITTI E BUONI」でユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝。
多くの人の注目を集め、バンドとして大きな転機になったであろう1枚。勢いだけでなく多くの色を見せている、実に興味深い内容の1枚です。
Teatro d’Ira 収録曲概要
「Teatro d’Ira」収録曲は以下の通り。
- ZITTI E BUONI
- CORALINE
- LIVIDI SUI GOMITI
- I WANNA BE YOUR SLAVE
- IN NOME DEL PADRE
- FOR YOUR LOVE
- LA PAURA DEL BUIO
- VENT’ANNI
イタリア語のタイトル「Teatro d’Ira」を訳すと「怒りの劇場」。これは誰かへの思いというよりも、各曲を聞いていると自分たちへのもどかしさかなと。
頭の中で想像する姿と、現実にはまだズレが大きいという感じで…。
その上でちょっと面白いなと感じたのは「Vol. I」の部分。ボリュームとなれば数字を大抵は思い浮かべますけれど、これは「I = アイ = 私」なんです。
いい感じで意味がつながりますし、面白いなと感じずにはいられません。
ZITTI E BUONI
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ユーロビジョン・ソング・コンテスト優勝曲「ZITTI E BUONI」。(1曲目)
自分がMåneskinの存在を知ったのも、確かこの曲。イタリア語なのでそのままでは何を言っているか分かりませんが、翻訳してみるとなるほどです。
Loro non sanno di che parlo
「俺が何を言っているかわかんないだろ」。多言語話者なら別ですが、話す言葉が異なれば、何かを使って翻訳しないと何を言っているのか分かりません。
英語ではなくイタリア語で歌っているからこそ、確かにと思ってしまいます。
Siamo fuori di testa, ma diversi da loro
「俺たちは気が狂っているけれど、彼らとは違うんだ」。人は共同生活だからこそ触れ合うことは必要でも、全てがそうではありません。
自分を押し殺して我慢をしすぎるのは、ちょっと異なる感じです。
また日本でも多いですけれど、英語を含む多言語で話していると静かに黙ってしまうもの。それを踏まえた上でタイトルは「ZITTI E BUONI = 静かでいい」。
生まれた国がどうというよりも、気心の知れない奴らと無理にいる必要はないぜ! ということなのかなと。面白い世界観が描かれている曲です。
CORALINE
教えてくれ「CORALINE」。(2曲目)
若さゆえに勢いで押してもおかしくないのに、寂しさを伴う歌を2曲目に。そのことが勢いを殺すどころか、聞き手を引き込む形になっているのが興味深い。
繰り返して聞くちより分かりますが、曲順がよく考えられたアルバムです。
Coraline bella come il sole
Guerriera dal cuore zelante
「太陽のように美しいコアライン。熱き心を持つ戦士」。英語読みで言うならキャロラインで、女性の名前。切ない歌になるには、理由があります。
Coraline, Coraline, dimmi le tue verità
「コアライン、コアライン、あなたの真実を教えてくれ」。美しい人であるのに、何かに叫んだり、泣いたりする姿を見たから…。
自分たちの目の前では、美しく熱き心を持つ戦士。弱みを見せることをせず、無理をしているように見えるから、痛みを分けてくれということなのかなと。
もしくは真実を話してくれれば、軽減することができるんじゃないかという。寂しいけれど、優しさからの思いが溢れた曲。個人的にすごく好きです。
I WANNA BE YOUR SLAVE
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欲求が止まらない「I WANNA BE YOUR SLAVE」。(4曲目)
日本語にするなら、あなたの奴隷になりたい。インパクトのあるタイトルですが、ドMの人が俺のことを痛み付けて! という歌ではありません。
目に映る物、手に届くもの全てを手にいれたい欲求。その中で「I WANNA BE YOUR SLAVE」を始まりの言葉、タイトルとしたのは実に良いセンスです。
I wanna be your slave, I wanna be your master
「あなたの奴隷になりたい、あなたの主人になりたい」。全体を通して真逆とも言えることをどちらもをと求めるのは、正に欲求の塊。
その思いは、そこに山があるから登るに近いのかも…。歌詞が英語なので分かりやすいですが、願望と欲望が底なしで溢れ出てくる形。
人の欲深さを描いたというのが、この曲の真意ではないでしょうか?
また、後にIggy Popが参加した別バージョンもリリース。孫に近い年齢差がある中でのコラボは、中々の面白い形に仕上がっています。
三つ子の魂百までのような感じで、人の欲深さはいくつになっても消えないというのが描かれているようにも別バージョンでは聞こえますよ。
FOR YOUR LOVE
俺の全ては「FOR YOUR LOVE」。(6曲目)
惚れ込んでしまったからこそ、あなたにしてあげたいこと。それが俺の喜びなんだというのは、愛するがゆえでしょう。
I wanna be a good man and see you smile
And I wanna swim between your thighs
I wanna fuck you ‘till you scream and cry
「いい男になって君の笑顔を見たい。そして君の太ももを泳ぎ、悲鳴を上げて泣くまでファックしたい」。他は純粋なのですが、ロックな突っ込みどころ。
これも、読み解けば君を喜ばせたいということなのでしょう。
I’ll do whatever you want, for your love
「君の愛のために、望むことをなんでもするよ」。愛するからこそ、笑顔になることをしたい。不器用さの愛する思いは、男性の方が分かりやすいかも…。
先に取り上げたツッコミどころがあるからこそラブソングではありますが、多くある形とは少し異なる表現になっています。そこが逆に面白いです。
VENT’ANNI
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あなたは「VENT’ANNI」。(8曲目)
20年、20歳を指すタイトル。これは訳さないと分からない…。時間としては長い期間であるけれど、精神的にも大人かというとそうでもないもの。
遥かに上の自分もなりきれてないのですから、年齢的にはというのは微妙な頃合いではないでしょうか。テーマとして面白い曲です。
E sarai pronto per lottare
「そしてあなたは戦う準備ができている」。大人だからこそできること。責任は増えるけれど、その選択肢というのは無限大です。
それでもずっと子どものままではいられないのが、音にある切なさなのかも…。
Ma c’hai solo vent’anni
「しかし、あなたはまだ20歳だよ」。これが50にも60にもなってなら別ですが、たしかにまだ20歳。社会に出る人もいますが、学生も多い年齢。
多くのことを無理に責任もって抱え込まなくてもいいよと言っているのかも…。聞く方の年齢や、大人の成熟度によって受け取り方が変わってきそうです。
誰かにというよりも、この曲は年齢が近い自分たちへ歌った曲のように聞いていて感じました。無理に背伸びをせず、その時にできることをという感じで。
あとがき
自分も最初そうでしたが、英語にイタリア語と言語が混ざるので、取っ付きにくさはあります。ですが、少し気になってしまうとギュッと引き込まれる1枚。
実際に多いでしょうけれど、Måneskinを初めて触れるにも最適なアルバムではないでしょうか。また、29分台とコンパクトな内容であるのいい感じです。
これは1度聞いてお腹いっぱいになるのではなく、またがあるからこそ気になる。その内にしっかりとハマるという、相互作用のような形があります。
また、ジャンルを問わず打ち込みのデジタルが全盛の中、がっつりなバンド。そこに濃い特徴的な歌声がマッチするからこそ、今うまくハマるのでしょう。
全く新しいというのではなく、古い物を取り入れつつ自分たちの音に。恐らくGreta Van Fleetが狙っていた位置を、がっつり持っていった感じです。
メンバーもみんな若く、今後の成長も期待するなという方が無理なMåneskin。きっと聞き手の想像を上を行く、面白いバンドになるのではないでしょうか?
以上、『Måneskin:Teatro d’Ira – Vol. I ~ずっとこのままではいないから~』でした。
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JOE (ジョウ)
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