Maggie Lindemann (マギー・リンデマン) 1枚目のEP「PARANOIA」。
2015年に「Knocking on Your Heart」でデビューしながら、リリースはシングルのみであった彼女の、初の曲がまとまったEP。
とはいえ1枚としての音としてはまとまりがないのが、逆にギラギラ感を感じさせる内容。1回ではきっとよく分からないであろう、不思議さがあります。
PARANOIA 収録曲概要
「PARANOIA」収録曲は以下の通り。
- Knife Under My Pillow
- GASLIGHT!
- Scissorhands
- Crash and Burn
- Loner
- Love Songs
- Different
- It’s Not Your Fault
シングルとしてこれまでに12枚ありますが、今作に含まれるのは2020年以降にリリースされた4曲。ヒットした「Pretty Girl」も含まれないのは興味深い。
冒頭にも記述しましたが、1枚としての音はまとまりはないEP。必要以上に過去は振り返らないというのは、面白いと感じる人も多いのではないでしょうか。
荒削りな部分を残しているのは、その棘の部分を武器にしているのかもです。
Knife Under My Pillow
![]() | 「Knife Under My Pillow」 フルMVをApple Musicで観る |
心の中にある狂気「Knife Under My Pillow」。(1曲目)
歌詞にEPのタイトル「Paranoia」が出てきますし、オープニングというだけでなく、重要な位置を占めるであろう曲。最初のリリースもこの曲でした。
彼女が影響を受けたという、アヴリルラヴィーンの要素も感じさせます。
But it’s all inside my mind
「でも、それは全て私の頭の中にあるの」。タイトルの「Knife Under My Pillow = 私の枕の下のナイフ」は、実物ではなく頭の中にある物。
実際に通常は置くような場所ではないですし、凶器でありながら自分の中に確かに存在する凶器なのでしょう。悪魔と表現しなかったのが、逆にリアルです。
100%善人の人なんかまずいないですし、闇があるのは当然のことなんだと表現しているようにも聞こえます。不自然ではなく、これが当然とこととして…。
GASLIGHT!
![]() | 「GASLIGHT!」 フルMVをApple Musicで観る |
Siiickbrainとのコラボ「GASLIGHT!」。(2曲目)
叫びの激しさとともに、不思議な雰囲気の漂う曲。バックの演奏が無機質であるかこそ、正気ではない感じが強くなっています。これは中毒性があるかも…。
Where do you think
Where do you think you’re goin’?
「どこだと思う。どこに行くの?」。意識がおかしくなっているからこそ、自分がどうなっているのかも分からない。怖ささえ感じてしまいます。
「GASLIGHT = ガス灯の光」ではなく、心理的に正気ではないと思い込ませるスラング。この狂気すらある曲をシングルとしたのは、興味深い選択です。
Scissorhands
![]() | 「Scissorhands」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
インダストリアルな要素を含んだ「Scissorhands」。(3曲目)
タイトルからして、ジュニーディップが演じたシザーハンズを思いだせる曲。手にハサミを持つ特殊な存在だからこその、葛藤が伺えます。
Why can’t no one understand?
I got scissors for my hands (My hands)
「なぜ誰も理解してくれないの? ハサミを手に入れた私の手」。誰かに近づきたくても触れたら傷つけてしまうからこそ、自らはそばにはいけない。
したくてもできないことがあるというのに、寂しさを感じさせます。内容がうろ覚えになっているので、シザーハンズをまた見たいなとも思っちゃいました。
曲を聞いて、行動をしようとする。音楽の面白い点ではないでしょうか。
Crash and Burn
![]() | 「Crash and Burn (Live in Los Angeles)」 をApple Musicで観る |
砕け散って燃えんだ! 「Crash and Burn」。(4曲目)
典型的なバンド曲。展開を含めて分かりやすいだけでなく、耳に馴染みがあるからこそ気になってしまいます。ライブでも、ハイライトになりえそうな曲。
No return
We’ll crash and burn
「戻せない。私たちはクラッシュして燃えるだろう」。嘘と信実が共存する世界で、どっちつかずにならない。だからこそ、燃えることは悲しみではなさそう。
望んでいる状態ではなくても、やりきったことに意味を持つんだと表現しているのかも…。EPの中でもコピーしやすいだけでなく、つい弾きたくなる曲です。
Loner
![]() | 「Loner」 Lyric VideoをApple Musicで観る |
孤独であることを楽しむ「Loner」。(5曲目)
なんとも寂しい思いの曲。人は1人では生きられないけれど、私は孤独を選択。闇でありながら、真意は別のものがあるのでは? とも想像させます。
I like a dark room
With nobody but pain
「暗い部屋が好き。痛み以外は誰もいない」。孤独が好きと言いながら、今の状態を”痛み”だと気付いている。これは救われたい思いではないでしょうか。
孤独が好きと自ら言うことで、本当の感情を抑えているかのよう。ただ、そうしなければ今を乗り切れないようにも思えるのが、寂しさとなって聞こえます。
1音ずつ休符を含めたギターが切なさを表現しているようで、いい感じです。
Different
多くの人が経験したことがあるであろう「Different」。(7曲目)
頭の中では変わることはできないと知りながら、別の誰かになってみたいという思い。聞いていると、”もしも”の場合の想像が浮かんできます。
I just wanna be someone different than me sometimes
I just, I just, I just
「たまに違う人になりたいの。私はただ、ただ、ただ…」。強そうに一見見える人でもの、どこかに弱さはあるもの。だからこそ、願いといよりも単なる思い。
だれかと比べてしまうからこその感情は、共感してしまいます。自分よりも輝いている、強い誰かへ。寂しい音は変われないことを知っているからかも…。
EPの中で主にならないかもですが、この曲が気になるという人も多そうです。
あとがき
バンドがEPやバンドでよく表現するような、音としてのまとまりはない形。それでも人の中にある闇を描いているような歌詞が、別の一体感を感じさせます。
一聴の表面上はごちゃまぜだけど、それだけではない。1回でどうこうよりも、聞くたびに変化を感じさせるのは、意図があるかわかりませんが興味深い表現。
今作に収録されたのは、ロック度が高い曲。ですが、ポップなこれまでに要素も提示してきた彼女。対局になるものが今後リリースされても、面白いかも。
ポップとロックのどちらも表現できるので、今後にも注目ですよ。
以上、『Maggie Lindemann:PARANOIA ~私の中に確実に存在するモノ~』でした。
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JOE (ジョウ)
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