HIM:Dark Light ~私の求めている光はこの世界にはない…~

HIM:Dark Light洋楽レビュー
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HIM (ヒム) 5枚目のアルバム「Dark Light 」。

2005年にリリースされたアルバムで、2017年に解散してしまったHIMの絶頂期といって間違いないアルバムです。今も全く色あせない、魅力があります。

フィンランドのロック・バンドで、一般的にはゴシックメタルに分類されるHIM。バンド好きはもちろん、ビジュアル系が好きな人にもオススメです。

HIMならではの世界感が通して聞けるアルバムは、バンドマンにもオススメします。これでもかと切ないからこそ、美しさであふれているアルバムです。

Dark Light 収録曲概要

「Dark Light 」の収録曲は以下の通りです。

  1. Vampire Heart
  2. Wings of a Butterfly
  3. Under the Rose
  4. Killing Loneliness
  5. Dark Light
  6. Behind the Crimson Door
  7. The Face of God
  8. Drunk on Shadows
  9. Play Dead
  10. In the Nightside of Eden
  11. Poison Heart

1曲目「Vampire Heart」から、ラスト「Poison Heart」まで、アルバムの世界観が一切崩れることがないのが、このアルバムの特徴です。

HeartからHeartで締めるというのも、このアルバムだからこそですね。

コンセプト・アルバムではないのですが、アルバムとして必要な曲が凝縮された11曲49分となっています。どの曲も、このアルバムには欠かせません。

ダークな部分であったり、ビジュアル系に通じる切ない歌詞になっているのに、難しい言葉と使っていないのも特徴です。無理なひねくりはありません。

アルバムの完成度だけでなく、歌詞も参考になるバンドは多いと思いますよ。

Vampire Heart

オープニング曲「Vampire Heart」。(1曲目)

三連符を使ったイントロが印象的な、アルバムの導入にぴったりな曲です。11曲どれも欠かせないアルバムですが、オープニングはこの曲が1番はまります。

この曲の「Vampire Heart = 吸血鬼の心」は少し切なくて、今はいなくなったあなたを思い続けるための吸血鬼の心と捉えることができるんです。

吸血鬼というと太陽はご法度ですが、あなたが愛した太陽を拒むことになっても、吸血鬼になってあなたを思い続ける…。深い愛が込められています。

人としての形はなくなっても、他の誰一人あなたのことを忘れてしまっても自分だけは吸血鬼になっても愛し続けるというのは、究極に近い愛を感じました。

ブレス(息継ぎ)の時にタメがあるのですが、たまらない感じがします。

Wings of a Butterfly

鳥ではなく、蝶の羽というのが興味深い「Wings of a Butterfly」。(2曲目)

解釈は人によって異なるでしょうけれど、独占欲の愛の歌に聞こえます。

Rip out the wings of a butterfly
For your soul

「蝶の羽を引き裂く あなたの魂のために」。魂になっても飛べない状態にして、自分の手元に留めておきたい。感じ方によっては怖い歌詞です。

あなたの魂のためにと言いながら、自分のための気持ちが強い気がします。愛してしまったからこその、深すぎる愛。気持ちはわからなくても、興味深いです。

Under the Rose

あなたがもう戻らない存在であるというのが切ない「Under the Rose」。(3曲目)

あなたの心はバラの下にある。戻ることのない現実を認める、切ない曲です。バラの下というのは、お墓の中にあなたはいるということですよね。

どんなにあならが戻ってきて欲しくても、魂と心は分離してしまった状況を考えると、切ない気持ちでいっぱいになる曲です。

認めたくない心と、認めざると得ない心の葛藤が分かるような演奏になっているのも、この曲に引かれてしまう理由に感じます。

ヴィレ・ヴァロのはっきりと歌わない歌い方も、歌詞にマッチしていますよ。しっかりと歌うというよりは、ささやきに近い感じの歌声です。

ささやく歌い方のビリー・アイリッシュが多くの人に評価される今だからこそ、ヴィレ・ヴァロの歌い方はあらためて評価される要素を持っている気もします。

Killing Loneliness

HIMの切なさと美しさが1番表現されていると言っても過言ではない「Killing Loneliness」。(4曲目)

イントロのピアノの時点で一気に世界観に引き込まれてしまう曲です。孤独であるかこそ、孤独を殺そうとする…。終わりはなく、繰り返す切なさがあります。

I’m killing loneliness
Nailed to a cross, together
As solution begs us to stay

「私は孤独を殺している 一緒に十字架を釘付けてとどまるように」。殺そうとしているのに、離れないことを選択しているんです。終わることはない…。

歌詞の言い回しも、演奏も複雑ではないけれど、引き込まれてしまう世界観です。痛く切ないのに、繰り返して聞いてしまう魅力がこの曲にはあります。

Dark Light

アルバム・タイトル曲「Dark Light」。(5曲目)

アルバムの中で唯一の明るい曲です。「Dark Light = 暗い光」と小さな光だからこそ、希望を感じさせる光になっています。暗いからこそ、明るいんです。

ただし、求めている明るさの先に求めている世界が普通とは異なります。

To learn how to die
in peace with her God
Dark light

「死ぬ方法を学ぶ 彼女と神と平和に 暗い光」。光の先に求めているのは今の世界ではないというのが、それしか選択がないのか? と切なくなりますね。

もし「Bright Light = 明るい光」であったら、全く別の曲になったことでしょう。アルバムの中では明るい曲であるのに、切なさも兼ね備えている曲です。

Play Dead

「Wings of a Butterfly」とのつながりを感じる「Play Dead」。(9曲目)

つながりというか、アンサーソングと言える曲になっています。自分の元になんとしてで留めて起きたかった気持ちは逆で、自分がこの世界にいないんです。

I stay dead
Until you vell my scars say goodbye to fate

「私は死んでいる。あなたが私の傷となり、運命に別れを告げるまで」。思念というのは体が朽ち果ててもある気がするので、思いの強さからでしょうね。

実際はあなたではなく死んでいるのは自分という深くて、切ない曲です。思いとはあなたと自分が逆であることに気付いたからこそ、穏やかな曲の気がします。

Poison Heart

Ramonesのカバー曲「Poison Heart」。(11曲目)

カバー曲であるのに、完全にオリジナル曲にようになっています。オリジナルを知らない人であれば、カバー曲とは思わないかもしれませんね。

歌詞も曲の雰囲気も含めて、このアルバムでカバーされるためにあったのではないか? と思わせる分人気があります。オリジナルもカッコいいですけどね。

カバー曲だからボーナス・トラックかというとそうではなく、完全にアルバムの中の一部であり、ラストに収まるのが自然に聞こえる曲です。

カバー曲はこうするんだよという、お手本と言える曲かもしれません。

あとがき

アルバムを通して、切ない。だけど美しいアルバムです。すごく派手な曲があるわけではないのに、アルバムを通しての世界観に圧倒されてしまいます。

他のアルバムに収録された単曲であればグサッと突き刺さるような曲もありますが、アルバムとしての完成度は「Dark Light」が1番ではないでしょうか?

HIMは既に解散していますが、ゴシックメタルはHIMに続くようなバンドがいないというか、少ないです。続くバンドが出てくることを期待しています。

マニアック過ぎたり、ライト過ぎるバンドはちらほらいるのですが、どっちにもアピールできるようなバンドはいないんですよね。狙い目のポジションですよ。

長いこと聞いているのに、聞くたびに新たな発見が見つかる気がするアルバムです。そして、常に切ないけれど、美しさを感じるアルバムでもあります。

バンドサウンドで、切ない感じが好きな人には、特にオススメします。

 

以上、『HIM:Dark Light ~私の求めている光はこの世界にはない…~』でした。


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JOE (ジョウ)

Guitar、F1を筆頭にモータースポーツ全般、野球(巨人)が好きな、ジャンルを問わない音楽マニア。日々記事更新中で、SNSは基本オマケ。 もっとプロフィール & あぶまいについて

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