Ashnikko (アシュニコ) 1枚目のアルバム「DEMIDEVIL」。
前作のEP「Hi It’s Me」から、1年半。他のアーティストいうところのアルバムですが、名義上はミックステープとしてリリースされた1枚。
ジャケットからインパクトがありますが、それ以上の濃さを持った内容です。
DEMIDEVIL 収録曲概要
「DEMIDEVIL」収録曲は以下の通り。
- Daisy
- Toxic
- Deal With It (feat. Kelis)
- Slumber Party (feat. Princess Nokia)
- Drunk With My Friends
- Little Boy
- Cry (feat. Grimes)
- L8r Boi
- Good While It Lasted
- Clitoris! The Musical
10曲でも25分。ハイテンポな曲が盛りだくさんというわけではなのに、さらに短い時間に感じる内容。聞けば納得の、凝縮された形の表現です。
アルバムでよくある、この曲はいいかなと飛ばす暇さえありません。
Daisy
![]() | 「Daisy」 フルMVをApple Musicで観る |
初音ミクをフィーチャリングし、「Daisy 2.0 (feat. Hatsune Miku)」としてもリリースされた「Daisy」。(1曲目)
基本的な音は変わっていませんが、不思議な感じはソロでオリジナルの方が強いかも…。聞き手の興味をがっつり掴む曲は、オープニングにピッタリ!
I’m terrifying
「私は恐ろしいの」。クレージーな私にあなたは興味を持ってくれているけれど、表面の一部だけでなく、その多くを知ったらどうかしら? な感じかなと。
単曲としてでなく、10曲の始まりとして、意味を持たせているのも特徴です。
Toxic
毒性についての問いかけ「Toxic」。(2曲目)
ループする音と、繰り返される同じ言葉が、疑問の強さを感じさせます。
What’s a sheep to a tiger?
「トラにとって羊って何?」。弱肉強食でいえば、食べる側と食べられる側。だたそれって、常に同じ結果となるの? と聞かれているかのよう。
多くの人にとっての常識が当然とは限らないのが、毒性なのかもです。
また、ループ音源の多くは印象に残りずらいですが、この曲の面白さは時折入る休符。自然とうまい引っかかりとなる場所にあることで、印象に残ります。
バックトラックの作り方のうまさが、楽器を弾く人ほど引っかかるのではないでしょうか。変化させる部分と、そうではない箇所が絶妙です。
Deal With It (feat. Kelis)
![]() | 「Deal With It (feat. Kelis)」 フルMVをApple Musicで観る |
ケリス フィーチャリング「Deal With It (feat. Kelis)」。(3曲目)
音だけの判断であれば、「DEMIDEVIL」で1番ポップな曲。だたし、そこにのせられた思いは、ポップとは異なるのが面白い。引きつけられる表現です。
I hate you so much right now
「今あなたなんて憎い」。普通に恋をしたい彼と、だたそれだけでは嫌な私。考えがうまくリンクしないからこその、好きではなく憎さへ。
あなたとはなっていますが、普通の恋ができない、普通の恋で満足することのできない自分への憎しみなのかもしれませんね。面白い表現です。
Drunk With My Friends
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不思議さが漂う「Drunk With My Friends」。(5曲目)
「DEMIDEVIL」に収録されている中で、1番理解するのが難解な曲。MVも不思議さでいっぱいですし、よく分からさが逆に面白く感じてしまいます。
Now I’m drunk with my friends
「今、友だちと酔っ払ってるの」。酔っていいることは認識しているけれど、何をしたいのか、今なぜこの行動をしているのが理解していないのかも。
酔ってしまって、起きた時には全てを忘れているかのような…。すごく不思議な世界観で、この曲だけリピートしていたら、トリップしてしまうかもです。
Cry (feat. Grimes)
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グライムス フィーチャリング「Cry (feat. Grimes)」。(7曲目)
「DEMIDEVIL」の中で1番ロックな曲。ギターが入っているとはいえ主体はデジタルな音ですが、がっつりとロックなアレンジにしてもハマりそうです。
Bitch, are you tryna make me cry?
「あなたは私を泣かせてくれるの?」。悲しさというのではなく、特別な存在になってくれるの? という感じに聞こえます。
私に手を出すということは、覚悟は出来てるかの確認のよう。曲としての表現は面白いですけれど、実際にあったら重いかも…。嫌いじゃないですが。
また、グライムスの囁きのようなパートが、心にある思いを表現した形であるのもポイント! 自分では表現が不可な部分を、あっさりと託す潔さ。
自分には何ができるかと、客観的に見えているからでしょうね。アーティストによくありがちなエゴではなく、曲をよくするための表現。
この点からも、アシュニコは只者ではないなと感じさせてくれます。
L8r Boi
アヴリル・ラヴィーン 「Sk8er Boi」のカバー「L8r Boi」。(8曲目)
1枚目のアルバム「Let Go」に収録された、代表曲の1つ。カバーでタイトルが変わるというのは、”らしさ”です。
音としての表現もですが、よくよく聞くと歌詞も変わってます。そのまま歌わずに変更が入るのは、アシュニコならではのブラッシュアップなのでしょう。
He needs a baby sitter
But she’s finally found her worth
「彼にはベビーシッターが必要。彼女は遂に自分の価値を見つけたの」。オリジナルだとスケーターでカッコよく手が届かなかった彼が、別の姿に。
時を経て立場が変わったともいえますが、実に面白い表現。その音もですが、歌詞を見比べてみるとより楽しめるカバーです、
また、このカバーを聞いていて思ったのは、声質はアヴリル・ラヴィーンと系統が似ているなと。何か馴染みがあるなと思っていた、疑問が解けました。
Clitoris! The Musical
ジスジェンダーなあなたへ「Clitoris! The Musical」。(10曲目)
生まれた時の性別と性同一性が一致する人を指す、ジスジェンダー。言葉で書くと難しいですが、ノーマルな人たちのこと。変ではなく、マジョリティ。
I’m so damn bored of you
「あなたに私はとっても退屈しているわ」。バイ・セクシャルを公言しているアシュニコの言葉として考えると、いろいろな意味が考えられます。
その生き方に否定ではないけれど、見えていない物もあるんじゃない? という感じでしょうか。ラストにこの考えてしまう曲を持ってくるのも面白い!
確かに違う世界も見えるのでしょうけれど、自分はノーマルのままでいいです。
あとがき
ミックステープとしてリリースはしますが、実質的にはアルバム。ただ彼女の面白いのは、リアルなテープとしても販売をするということ。
音としてでデジタルな表現であるのに、アナログなテープで。日本では買いづらいですし、再生環境はもう持ってないですが、どう聞こえるのでしょうか。
本当にビジュアル、音、全ての表現を含め、面白いことをしてくる人です。
表現上は突飛なことをして見えても、そのクオリティーが高いこと。言葉は刺激的でも歌声に嫌味がなく、聞き取りやすいのも面白さの要因でしょうね。
表現したいことを、ぼやかさない。これはなかなかできることじゃありません。
リアルに面白いことをしているアシュニコ。その存在を知ったのではあれば、1度は聞いてみることをオススメします。
以上、『Ashnikko:DEMIDEVIL ~あなたを刺して張り付き離れない~』でした。
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JOE (ジョウ)
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