Amaranthe (アマランス) 3枚目のアルバム「Massive Addictive」。
前作「The Nexus」から1年7カ月。スクリームボーカルが、アンドレアス・ソルヴェストロームから、ヘンリク・エングルンドにチェンジ。
デスボイスに重みが増すと同時に、バンドの出す音も太くなった形に。デジタル要素が強いからこそ軽くなりやすい部分が変化。着実に進化が聞ける内容です。
Massive Addictive 収録曲概要
「Massive Addictive」収録曲は以下の通り。
- Dynamite
- Drop Dead Cynical
- Trinity
- Massive Addictive
- Digital World
- True
- Unreal
- Over and Done
- Danger Zone
- Skyline
- An Ordinary Abnormality
- Exhale
- Trinity (Acoustic)
- True (Acoustic)
Acoustic ver.の2曲はボーナス・トラック。これがどちらもいい感じ。アルバム本編とは異なるのですが、この形はありだなと思わせてくれるクオリティ。
前作「The Nexus」までは勢いで押し切るという感じでしたが、それだけじゃないんだぜ! というのを見せてくれる内容。進化という言葉が似合います。
男女3人のボーカルがいる時点で他とは異なるバンドですが、その特色を生かしてより面白くなってきたという感じ。変化がとても興味深く感じる1枚です。
Dynamite
アタックが強くインパクトがある「Dynamite」。(1曲目)
上モノの音が倍テンポになっていて、ドキドキする感じが正にダイナマイト! 新体制での一発目であり、アルバムのオープニングにもピッタリな曲。
Like the fire in the sky, I am dynamite!
「空の炎のように。私はダイナマイト!」。完全に私は目覚め、爆発的な力を持っていくんだというが、ストレートでカッコいい!
脇を固める男性2人のボーカルが、うまいことハマって、エリーゼ・リードの歌を支えています。1人だけでは出せない、歌声の深さですね。
実際はミディアムテンポであるのに、とても早く聞こえる曲。デジタルのうまい使い方だなと聞くたびに感じるのは、楽器を弾く人の特有の感覚かも…。
Drop Dead Cynical
分かっていての計算の意図を感じる「Drop Dead Cynical」。(2曲目)
最初に聞いた時は、Marilyn Mansonの「The Beautiful People」? なんて感じさせる曲。きっと自分だけでなく、多くの人が思ったことじゃないでしょうか?
We’re drop dead cynical
「私たちは皮肉屋だ」。 曲名にもかかる部分ですが、あえての部分を感じずにはいられません。聞いた印象は似ているのですが、中身は異なるのもポイント!
きっとパクリという感覚ではなく、面白いなと感じる人が多いのではないでしょうか。
Trinity
「三位一体」。Amarantheをそのまま表すような「Trinity」。(3曲目)
生きる時も死の場面での、私たちは1つなんだの意思を感じる曲。アルバムの中の1曲ですが、バンドとして深い意味を持っている気がします。
One makes three in this chemistry
「この科学が1が3となる」。男女の3人のボーカルがいる、まさにAmaranthe。他にあまりいないからこそ、化学反応を楽しんでいそうです。
多くのアーティストがプロモーションの手段として行うことが増えてきた、リリックビデオ。2014年の時点でこの出来というのは、ある意味で凄いかも…。
ボーナス・トラックのAcoustic ver.がまた別の形として楽しめるのも、聞いていて興味を引かれます。変化も大きく、歌詞の意味も異なって聞こえますよ。
Massive Addictive
アルバム・タイトル曲「Massive Addictive」。(4曲目)
ミディアムテンポで最初は弱ささえ感じますが、徐々に深みを増していく曲。歌詞にも含まれる毒。知らないうちに侵食されるという表現が合っていそうです。
Scared of losing my mind
「心を失っていくのが怖い」。避ける意思は持っているのに、 なすがままになっていく。「Massive Addictive = 大規模な中毒性」。ぴったりなタイトル!
最初は流してしまうかもですが、繰り返して聞いてみることをオススメします。
Digital World
曲名通りにデジタル色が強い「Digital World」。(5曲目)
曲の構成もですが、歌詞も変わらずに繰り返されるのが面白い! デジタルな世界を全体として繰り返されるのことに意味を持ち、それゆえの怖さを感じます。
You will never have to cry, cause the future is sold
You can never die and you’ll never grow old
「あなたは泣く必要はない。未来が売られているから、死ぬことも、年を取ることもない」。データであるデジタルならではですが、これでいいのでしょうか?
不老不死を求める気持ちは分かります。ですが、形のあるものはいつかは朽ちていくのが自然であり、美学なのかもしれません。
歌詞まで見ていくと、聞く人によって異なる感覚になることでしょう。
True
自分の中にある本当の思いに気付いていく「True」。(6曲目)
鍵盤の音が冷たさでもあり、芯の強さをも感じさせます。誰かに歌うのではなく、自分に言い聞かせるような歌声も印象的に聞こえる曲。
This is the time for chasing my desires
What’s in my heart is true, ooh
「欲望を追いかける時。心にあるものが真実だから」。誰でもない自分だけのもの。曲調としては静かですが、自身で気付いたからこその強さを感じます。
ボーナス・トラックのAcoustic ver.はキーも変わっていますが、オリジナルを聞いた予想よりも大きな変化があるのも、聞き所です。
Over and Done
ロックバラード「Over and Done」。(8曲目)
このアルバムの隠れた名曲といって過言ではない、Jake Eのボーカルが肝になる曲。従来の疾走感だけではない、Amarantheが聞けます。
MVを作成したり、もっと強いアプローチ。もしこのタイプの曲が増えていたとしたら、Jake Eが抜けることはなかったかも…。切ないけれど、心に響く曲。
Why am I on the run? And so let’s turn this around
Before we’re over and done
「なぜ私は逃げているの? 戻せたらよかった。終わってしまう前に…」。寂しい思い。これから先に起こる決別にも感じてしまうからこそ、興味深い。
メインとはならなくても、バンドの振り幅を大きくしている曲。オススメです。
Exhale
本編のラストを飾る「Exhale」。(12曲目)
サビでの重なる歌声が印象的な曲。コーラスではなく、複数のボーカルが専任でいるからこその曲。Amarantheの強みにもなっていくことでしょう。
You’ve taken the ascendancy
「あなたは支配権を手に入れた」。その理由は誰かのいいなりになるのではなく、自分の意思を吐き出したから。思いを出すことは強くなれる。
それでも、曲全体にある切なさは、内を指しているのかと想像を沸き立てます。何かを手に入れるには、失うものもあるんだよという感じでしょうか。
聞いていて寂しくもなるのですが、いいアルバムだなと感じる終わり方。余韻を残さずにすっぱっと終わりとなるのも、いい感じです。
あとがき
セルフタイトルの1枚目、2枚目「The Nexus」もよかったですが、一気にバンドとして進化を踏み出したアルバム。
ロックバンドの鬼門になることが多い3枚目。守りに入るどころか攻めに転じたことが、うまい形になってハマっています。素直にいいなと感じる内容。
勢いのみで押し切らずとも変わらずに、最後まで聞かせきる。3人ボーカルという特殊な構成でも、それぞれの歌声が生きてきたのが理由なのかも。
エリーゼ・リードがバンドの顔に変わりはなくても、男性ボーカルの2人が脇を支え、地味に演奏も太くなっている。バンドとしてお手本のようなあるべき姿。
たまにふと聞きたくなるのは、間違いなく完成度が高いからでしょう。単純にリスナーとしても、演奏まで深く突っ込んでも楽しめるアルバムです。
以上、『Amaranthe:Massive Addictive ~体中に毒が回り侵食されたんだ~』でした。
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2013/3/13 release 2nd Album
Amaranthe:The Nexus ~絆を解き放った先に未来はやってくる~
2014/10/21 release 3rd Album
Amaranthe:Massive Addictive ~体中に毒が回り侵食されたんだ~ ←今ココ
2016/10/21 release 4th Album
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2018/10/19 release 5th Album
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2020/2/14 release Digital Single
Amaranthe:Do or Die ~食うか食われるかあなたはどっちを選択する? ~
2020/10/2 release 6th Album
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JOE (ジョウ)
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